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     【 エイズホスピスに出会うまで 】

      
      私は特にHIVだけに興味があったわけではありませんでした。
      ただ、【 死 】を迎えるその時に哀しみや苦しみ、不安を
      抱えたまま逝かれる方々のことがずっと気にかかっていました。


      抱えている重荷がもしあるのなら、この世で命があるうちに、
      ちらっとでもこの人生を振り返ることができれば、苦しみを手
      離して旅立つことができるかもしれない



      1997年頃、意識的に自分の心に向き合うことになった際に
      いずれはターミナルケアに携わりたいという漠然とした思いが
      あることに気がついたものの、どこでどんな風に関わりたいの
      か全く想像がつかないまま、漠然と将来の目標としてあたため
      ていました。


      日本では、ホスピスや老人介護施設、矯正施設や依存症施設、
      児童擁護施設などで関われる施設はないかあたってみたり、
      病院でボランティア活動をしている団体にも参加したことも
      ありましたが、それぞれの場所にはそれぞれのスタンスや役割
      があって、私の望むものとはどこか違いました。

      もし、どこか特定の宗教の信者になるか医療従事者になれば
      日本でもホスピスで活動できるかもしれませんが、現在のスタ
      ンスで関われるところを探していました。


      そんなとき、ウェブサイトで通称 【 エイズ寺 】 と呼ばれ
      る施設が、タイ バンコクから2時間ほどの場所にあることを
      知って自分の目で見てみたくなって、急遽訪問することにしま
      した。(一部の日本人からは、ナンプー寺と呼ばれています。)

      当時はわずかな情報しか手に入らなかったけれど、何かに駆ら
      れるようにして現地へ向かったことを今でも覚えています。


      病状だけでなく、精神的なダメージを多大に受けざるをえない
      現状にあって、本当に生きることがつらく、どうしようもなく
      なってしまった患者さんたち。
      それでも立ち上がり、苛酷な人生を受け入れ、必死に生きぬく
      人々の姿に大いに心を揺さぶられました。

      2012年秋 エイズホスピスに通うようになってから丸3年
      になります。



      HIVは個々の持つもともとの体質や免疫力に加え、環境や
      湿度、温度によって症状の表れ方が異なり、各国によって
      病気の傾向にも違いがあるようです。

      HIVは、日常生活における接触のみで感染の可能性が、
      ほとんどないことは、現在は多くの人々が知識としては知る
      ようになりました。
      しかし、それでもまだ多くの偏見や差別が存在し、問題の根
      が相当深いことを痛感せざるをえません。


      ほんの少しエイズの患者さんと関わったからといって、HIV
      のことがわかったわけじゃない。
      ただ、私が出会った現実のほんのごく一部からだけでも、
      それを通して自分の人生に深く問いかけるきっかけになって、
      エイズで苦しむ方々が残されたメッセージを、【 これから
      よりよい明日を生きるヒント 】として生かしていくことが
      できるかもしれません。

      誰もが自分らしく生きることができる、差別や偏見のない住み
        やすい環境を願うばかりです。
      多くの誤解を乗り越えて真の理解につながりますように☆
      さまざまなサポートを必要とする人々に手をさしのべることが
      当たり前である社会でありますように☆
  
      多くの願いを込めて、HIVと共に生きる人々の日常、タイの
      文化や習慣、寺のもつ役割などを含め、HIV陽性者と陰性者
      が共に暮らすコミュニティで実際に体験したことをご紹介して
      まいります。
       



     ★ 個人のプライバシーに触れるにあたり…
        訪問当初は入所者にカメラを向けることに抵抗を覚えました。
        プライバシーも気になり、お寺の僧侶に話を伺ったところ、

      【 ここは隠すものはひとつもありません。この病気はとても
         偏見や誤解を受けやすい病気。家族でも看病することに
         耐えられなくなって寺に捨てにくることがあるのも事実です。
         ここで起きていること、この病気のことを多くの人に知って
         もらいましょう。
         何か疑問に思うことや、もし何かやりたいことがあれば、
         何でも言いなさい  】

          という言葉をいただいて考えた末に、入所者の方々には
        許可を得て撮らせていただくことにしました。


     ★ 表現が適切でない場合もあるかもしれません。
        あくまでも私個人の主観による記述であることをご了承
        願います。
        言葉だけでは表現されづらい何かを少しでも感じていた
        だけるようでしたらとてもありがたいです。


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