2012年8月10日金曜日

【 滞在記19 】 【 2011. 8. 8 ~  8.23 】 



      ● ウイウ & フック


               
         オフィスで仕事をしていたウイウに赤ちゃんが
         できた!
           
         しかも、2週間後に産まれるって!?
         聞き間違いかと思ったら、そうではなかった。

         他の件で病院にいったら、妊娠していることが
         わかったそうだ。
         それにしても産み月まで気がつかないとは、何
         かおかしいと思わなかったのー?と聞いてみる
         と、体重が25キロほど増えたけど、ただ太っ
         ただけだと思ってたという。
         なんというおおらかさ!!

         お腹の子の呼び名は【 フック 】にした。
         どういう意味か聞いてみると、思ってもいなか
         ったとか無意識に…という意味だそう。確かに
         親の驚きがあらわれている。


         お産は心臓の負担と子供のHIV母子感染も懸
         念して帝王切開にするとか。母乳を飲ませない
         指導がなされ、粉ミルクが無料で配給される。

         無事に産まれてきますように!
         誰もがそう願った。

        そして…2週間後、
        4キロ近い色白の女の子が誕生した。
        ママが大きいから、あまり大きく見えないねえ。
  
       
       【 ただでさえ母子感染のこと、その他にも心配の
         多い人生だろうにと思うと、胸がしめつけられ
         る…それでも五体満足で産まれてきてくれたこ
         とが救いだと思う 】と、パパが言う。

       アロンコット師から【 ゲーム 】(*頬という意味)
       という呼び名が贈られたたため、産まれるまで呼ばれ
       ていた【 フック 】はお蔵入りとなった。


        病院は子供の感染予防対策の一環として一定期間投薬
        するのだが、ゲームの場合、医師の指示を見過ごした
        看護士のミスで投薬されていないことが発覚。
        その後気がついた医師が慌てて投薬を開始した。
        これがどういうことになるのかまだ誰も知りえないが、
        どうかどうか、最悪の事態につながることがありませ
        んように☆








     ● 母の日

        8月12日は母の日で国民の休日となる。
        この日、子供はジャスミンの花輪を母に捧げて
        日頃の感謝のしるしとする。



            
         盲目のPサックの母と姉が寺を訪れた。
         たびたび息子を慰問する母は、花輪を手にする息子
         を目の前に涙を流す。



そして、サックの身の回りの世話や洗濯など面倒を
みる恋人のレディボーイのデーンに【 本当にいつ
もどうもありがとう!あなたがいるからうちの子が
こうして頑張っていられるの 】 と、デーンの髪
         をなでる。
   
           母は様々なことを受け入れたのでしょうか。
         ひとりひとりが観音様のようだった。

市場の花輪売り場
         
       
        その日、盲目のトムが涙をうかべながら【 お母さん
        のかわりに花輪をもらってください 】という。


        手に握られていた花輪は高価なものだと見てとれるが、
        長い間握りしめられていたため、変色して枯れかけて
        いた。お母さんに恋しい気持ちが届きますように!


        トムの母は、病気になった娘をまだ許していない。
        電話で話すことすら難しく、居留守を使うこともある
        そうだ。入所した当初は、亡くなった恋人の家族がト
        ムを定期的に数日間家に招いていた。

        故郷に帰りたい帰りたい訴え続けるトムに、彼らは、
        せめてもの慰めになればと、2ヶ月に1回1週間ほど
        お寺巡りに連れ出すのだが、トムは車にのると疲れる、
        外泊は眠れないと、文句を言い続ける。

        トムはストレスのあまり要求が多く、何をしてもらっ
        ても満足することができないでいる。

        せっかくの好意で迎えてくれていた恋人の家族の足が
        遠のいてしまうのも、ストレスのため、つい依存が過
        ぎてしまうトムのことも、誰が責めることができるだ
        ろう。






      ● 救世主


        9月で寺に通うようになって丸2年になる。
        わずかな貯蓄が底をつくのも時間の問題…日本とタイ
        を行き来する生活にもけりをつけ、どちらかをベース
        に決めようと考えはじめてからずいぶんたつ。
        (すみません個人的な話です…)

        なかなか決め手がなく、シュミレーションを何度も重
        ねてきていた。
        日本での仕事も家族のことも気になるし、もう日本に
        決めようか…でもどうしてもお寺のことだけが心残り
        だった。

        ようやく心が決まった。よし、お寺のことを納得いく
        までやってみよう!仕事もタイではじめる。だめなら
        そのときは一文無しで日本に帰ればいい。
        家族のことも何かあればすぐ駆けつけられる。

        ただ、移住後も仕事が軌道にのるまで今までのように
        に物資を提供することができるだろうか?

        そう言いながらも、お寺に行くとやることに追われて
       【 心配しても仕方ないな… 】と気がかりはどこへや
        らだった。
        まずは長い間の懸案事項を決められたことで、大きな
        一歩を踏み出せたような気持ちだった。



        そんなある日、以前お寺でボランティアをしていらし

        た日本人医師とお会いすることとなった。
        タイでの経験を踏まえて、HIV/AIDS患者その家族の
        支援を、広く一般への啓発を目的とした団体を主催さ
        れる谷口医師である。        (写真中央)





        谷口医師いわく、今回お寺への寄付を考えているが、
        寺の施設増設にではなく、患者のために反映させた
        いと言われた。

        小金を1人いくらかづつ渡したとしても、何かおい
        しいものを食べてそのときで終わり。
        それにこれから両替に行って次の予定に間に合うの
        だろうか…と話されていたところだったという。

        この方も同じ思いの方だった!と、嬉しくなって、
        私も同じ考えで患者の様子をみながら必要なものを
        届けていることを伝えた。


        しばらくすると先生は【 お金を預けますからみな
        さんのために使ってあげてください 】と言われた。

        これで患者への必要な物資が届けられる!と思うと
        嬉しいやら驚くやら。患者を思う先生の気持ちも伝
        わってきて涙で声がでない。

        NPO GINAからの資金は、患者のリハビリ、
        何か治療が必要な場合と工芸品を製作する方々の
        支援に使わせていただくことになった。



        そしてその数日後、オランダのボランティア HUUB
        さんが、

       【 来年また来るけど、それまでの間みんなに今まで
         通りしてあげてくれる? 】そう言って、資金を
         預けていかれた。

        オランダの団体からの資金で、新聞や果物、日用品
        など支援をさせていただくことになりました。


        (For patients warairak
           Dornation money form friends from Huub)

        何も私1人でやらなくてもよかったんだ。
        今思えば資金はどうしようかと気にかけていた時間
        が嘘のよう…ただただありがたいのです♪


        みんなの気持ちを届けよう!
        ほぼ2年間自費で支援を続け、優先順位や傾向が把
        握できている時だからこそ、きっと資金をうまく活
        かすことができるだろう。







    ● 適切なケア


      夫婦、親子、兄弟姉妹、恋人、近い関係ほど、病気で弱
      っていく人の現状を受け入れることが難しい。

      以前、糖尿病を患った母が左半身麻痺で意識混濁する息
      子と同じ部屋で寝泊りしながら看病していた親子がいた。
      息子が以前好きだった果物を食べさせようと必死だが、
      内臓が受け付けず、すぐに嘔吐してしまう。

     【 ああ、息子よ!どうしてこうなってしまったの… 】
      と、泣き暮らす日々だった。

      高熱でうなされる姿を前に打ちのめされてしまうのだろ
      うか。以前元気だった頃の姿と、病に苦しむ姿が相容れ
      ないのだろう。
      触れることすらできず、嘆き悲しむ人々を多く目にする。
      しかし、なかには献身的にケアを行う親族もいる。


      ○ ユピンの韓国人の夫は2ヶ月に1度やってくる。
        妻の体を拭きおむつを換え、好物を持ってきて
        一緒に食事をする。

      ○ ルンは脳に菌も入っていて、メンタルも抱えて
        いる。
        自力で座ることもできず、おむつの中に手をい
        れて傷をさわって悪化させてしまう。
        車で20分ほどのところに暮らす姉が週に何日
        かやってきては、常に痛みを訴える弟をマッサ
        ージする。

        お姉さんが来ている時のルンといったら!
        普段見せることのない生き生きとした表情で、
        口調まではっきりしている。


     ○ アナン 妻のターイは同様にHIV陽性で寺に
       暮らしている。現在は元気でいるため、僧侶の
       托鉢チームで仕事をしているが、夜は重症病棟
       の狭いベッドで一緒に寝る。

       アンナンは、結核菌が脳に入り身体的な障害と
       共に意識や記憶にも症状が及んでいる。
        座ることも歩くこともできなくなった夫を見て
       【 かわいそうに3歳の子供に戻っちゃって… 】
        と献身的に付き添う。

        ターイはもともとよく気がつく女性だから、夫
        が望む前に手を差し伸べることができるのだが
        少しでも妻の姿が見えないと、駄々っ子のよう
        に暴れるようになってしまった。

        自分の望むことがなされないと全身のた打ち回
        って抗議する。
        痛みを紛らわすためにも自分に触れて欲しいの
        だが、その場を離れると、どうしてもっと触っ
        てくれないのかと怒りまくるのだ。

        彼の怒りはすさまじかった。
        1年ほど服用していた精神病の強い薬をやめた
        ばかりだという。反応が激しいのもうなづける。
        服用している間の彼の空ろな目と重さが思い出
        された。

        鎮静剤を打たれてようやく眠ることができるよ
        うになったが、手厚い看護の結果、ターイがい
        ないと極度の情緒不安定になってしまった。

        ターイは、托鉢の仕事が終わるとアナンの介護
        にやってくるが、実はその他にも工芸品製作の
        内職をしている。

        自分が寝る間も惜しんで働く姿に驚いていると、
       【 もちろんお寺にいれば3食は支給されるが、
         元気をだしてもらうためにも好物を食べさせ
         るには一日少なくとも100バーツかかるの。
         休んでいたってお金ははいらないもの 】と
        いって、幼い頃から家計を助けて働き通しだっ
        たと話し始めた。

             【 photo by Mr.Huub 】

       介護される人と介護する人、共に患者である。
       両方が元気になれる丁度のところを見出せますように☆