2012年8月9日木曜日

【 滞在記 4 】 【 2010. 2.10 ~  2.17 】 



    ● 恋人たち


       アットはトップのお坊さんの托鉢のお供で、ピーアは講堂
      でのショーに出演している。2人は付き合って2年。
       3ヶ月ほど前にピーアの具合が悪く重症病棟にいたことが
       あった。脳に菌がはいり、激しい頭痛を訴えてもがき苦し
       み、高熱が3日3晩続いた。
   
       頭がわれんばかりの痛みを紛らわすため、友人が馬乗り
       なって頭を押さえつけているが、他にどうすることもでき
       ない。そんなときアットはも彼女に寄り添っていた。
  


       重症病棟にきてちょっと症状が落ち着くと、恋人ができて
       お互いにサポートしあう姿をよく目にする。
       病棟でも【 恋ばな 】が飛び交う。



       以前は、ムーが電話をかけている姿など見たことなかった。
       ある人は、あんた携帯もってても全然ならないじゃん、電
       話の意味ないよなんて、いじわるをいう人もいた。

       【 HIVになったら人を好きになっちゃいけないの?
         僕たちはそういう権利さえもなくなるってこと? 】
        と、何度も聞いてくることがあった。


       ある日、マッサージしている時にかかってきた電話で、
       甘い声で話している。

       恋人できたの?と聞くと、友達のインからだという。
       てっきりふざけていたのだと思っていたが、嬉しそうに
       【 気がつかなかったの?もう1ヶ月になるんだよ 】
       という。

       お相手のインは以前、
       【 もう恋人なんか面倒。一人が一番!そう思わない?
         自由だよ、いま 】なんて言っていたのだ。

       二人は友達同士だったが、気が合い、よく話をしていた。

       【 一緒にがんばって元気になろう!って、元気をくれ
         るんだ。思い切って好きなんだけどなーと告白した
         ら彼女も好きだと言ってくれた。今すごくハッピー
         だよ♪ 】 彼のまわりにハートマークが飛び交う!


        一年以上もずっと寝たきりで足がクロスしている状態
        だったのが、一ヶ月ほど前にいきなり自力で座ること
        ができた!そうか、愛の力もあったのか。
        早く歩けるようになりたいなあ♪という。
        インと一緒に散歩できるようになるといいね!

        ムーの横にいたカップルは、さっき別れ話がでていた
        ばかり。ナロンとオーッは2ヶ月一緒にいた。新しい
        彼ができたんだって。


        ムーは、にやけた顔で歌う。
        【 ふられた男は泣きたいけど泣けないのさ~♪ 】
        人生なにがおこるかわかんないよね、だって。






      ● ワン・ナライ フェスティバル


       毎年ロッブリーでは遺跡を舞台に大きなお祭りがある。
       今年は2月16日~22日。お祭りに参加する人も民
       族衣装を着て遊びに行くんです。

       ローカルフードや民芸品の展示即売や、遺跡でのライト
       アップやショーもあり、夜は特に幻想的な雰囲。
       
       ☆遺跡を舞台とし、園内中にはりめぐらされた壮大なライ
        トアップに、大掛かりな仕掛け、音響効果でお祭りは大
        賑わい。


      ☆ナライ王は、当時外国人の扮装を楽しんでいたそうで、
       当時を偲んで、お祭り会場のあちこちで外国人の仮装
       をしているが、みんな汗だく!!
       (*真ん中のひげの男性は、日本の紋付はかま!)
        

        ☆はるかむかし宮殿に暮らしていた人たちも遊びにきて
         いるのか、写真にはまるで雪がふっているかのように
         オーブがうつっていた。
  
       ☆当時は貝や石のかけらを貨幣としていたので、ここでは
        クーポンのかわりに昔のお金に両替。
        昔ながらの麺料理やおかしに飲み物もあるけれど、さす
        が現代!フレンチフライやピザ風のものもありました。      


       ☆やはり現役だった!
        お祭りの演出として火も使うし花火もあるので、何かの
        ときのために待機中。
        (*筑西とは、茨城県筑西市のことでした)








     ● HIV感染者のためのリハビリ収容センター
       2000ライ (セカンドプロジェクト)
       (2010.8.16加筆修正)
    
        ☆この水は山からひき、この水を精製して飲料水を
         自給している。奥に見えるのは建設中のバンガロー



        通称エイズ寺で知られるパバナプ寺は、タイ人であれば
        知らない人がいないといってもいい程有名な場所です。

        行き場のないHIV陽性者を引き取り、ケアをし、自立
        して当たり前に暮らせるようなサポートしているが、患
        者の中にはお寺で人生の最後を迎える方も少なくない。

        しかし現在では抗HIV薬をのむことにより、HIV=死
        ではなくなってきている。

        セカンドプロジェクトは主に児童のため、そしてHIV
        に感染していてもこれからどう生きるか、感染者ができ
        るだけ通常の生活を送ることができるようにと考えてつ
        くられた施設。

        お寺の重症病棟で治療を受けて病状が落ち着き、ひとま
        ず自分で自分のことができるようになると同じ敷地内に
        ある軽症病棟へ移動する人もいますが、車で1時間半ほ
        どのセカンドプロジェクトにも移る場合もある。

        プロジェクト2は現在ほぼ5000ライ、現在も拡大中。



      ☆ 現在3年越しで建設中の火力発電施設は、年内にも
        始動予定。
        施設内で使用しなかった電力は、電力会社が買い上
        げることが決定している。


       ☆ 独身男性用 バンガロー


       ☆ ただいま建設中のバンガローには、55歳以上で
         あればタイ国籍でなくても居住可能とのこと。




       プロジェクト2施設内には、

       ☆ 居住施設

        ・女性のみ及び女性の同性愛者(感染者用)
        ・男性のみ及び男性の同性愛者(感染者用)
        ・家族 (感染者用)
        ・父母がいない子供だけの家 (感染者用)
        ・それぞれ年代別にの学生たちの家(感染者用)
        ・高齢者、障害者のための施設 (非感染者)
        ・従業員スタッフ、ボランティアのための住居
        ・               (非感染者)

        ・ひと家族につき犬一頭まで飼育OK
        ・女性用宿舎でも子供がいる場合は一緒に生活して
         いる。
        ・それぞれのエリアはわかれているが、仕切りは特
         にない。(※ 夜間の男女の行き来は禁止)
       
       ☆ 食堂
       ☆ 売店
       ☆ 病院1(感染者用)
       ☆ 歯医者(感染者用)

      ☆ 病院2
       (僧侶、高齢者及び一般者用として 現在建築中)
            
         

       ☆ 国立の教育機関
        (幼稚園)
        (小学校)
        (中学校)
        (高等学校)


       ☆ 学校も幼稚園から高校までタイ国立の学校と全く

         同様のカリキュラムの授業を受けられる。
       ☆ HIV陽性者も陰性者も同じ学校に通う。
         (生徒約900人のうち150人が感染者)
       ☆ 先生は生徒の状態を把握しているため、細やかな
         ケアができる。


 

       ☆ 看護、獣医学の専門学校的施設
       ☆ 薬草の研究所
       ☆ 火葬場
       ☆ お堂
       ☆ 僧侶のための住居
       ☆ 調理場・食堂 (数箇所)
       ☆ サッカー場
       ☆ ナイター施設のある運動場(HONDAの寄付)
       ☆ 飲料水精製所
       ☆ 瞑想ができるスペース数箇所
         3ヶ月に一度3日間の瞑想キャンプを開催
       ☆ 果物や樹木も苗から育てて植樹

      ☆ キングプロジェクトをとりいれた水耕栽培での
        野菜栽培。



       ☆ 鶏、あひる、豚、魚を飼育。
         鶏のケージが池の上にあり、糞を魚が食べる。
         人の食べ残しを家畜が餌とし、家畜の排泄物
         を肥料にして野菜を栽培。
         

       ☆ 研究用の牛、水牛、犬がそれぞれ300頭のほか
         馬や猫も飼われている。
       ☆ プラスティックやガラスなど、リサイクル物資の
         有効活用。


       ☆ 一日三食、食堂で食事が支給される。
       ☆ 具合が悪ければ病院での治療は無料。
       ☆ 衣服、トイレットペーパー、女性に生理用ナプキン
         も生活に必要なものは無料で支給される。


       ☆ それぞれの自立を目指しているので、できる仕事を
         担当する。
         ・庭仕事
         ・掃除
         ・動物の世話
         ・高齢者の介助者
         ・建設、修繕作業
         ・運転手
         ・守衛
         ・キッチンのサポート

       ☆ 現金の支給
         ・入院中の人       ひと月 150バーツ
         ・自分のケアができる人  ひと月 300バーツ
         ・仕事ができる人
         (1日6時間労働 週1日休日)1日 60バーツ
         (職種や熟練度合いにより日給アップの機会あり)


       ☆ 学校は、HIV陰性でも希望すれば入学できる。
       ☆ 近隣の高齢者や障害者(HIV陰性)が施設内で
         暮らしている。
         現在はまだ少数だが、準備が整い次第希望者を受
         け付けるそうだ。

         見渡す限りの風景がセンターの敷地だなんて!
         あまりに規模が大きくて写真にうまくとれない。
         セスナでもないと全体を把握できないと思ってい
         たら、全部を詳しく見るのなら3日かかるとか。

         現在はHIV陽性者、HIV陰性者、スタッフと
         あわせて1000人が、ともに生活している。


      ☆ 再会
         病院を案内してもらっていたとき、椅子に座って
         いる人に何気なく目を向けるとタナアティップだ
         った!
         寺では最近姿が見えなかったので周りの人に聞い
         てみると、家に帰ったといっていた。

         ここにいたんだねー!
         お互いにびっくりしながらも、話しはじめたら、

        【 本当に生きていてよかった。生きてたから会え
          たんだ… 】
         そういって手をあわせる… 熱くなった。
         彼の生きててよかったという言葉は重みがあった。

 2009年9月 パバナプ寺 重症病棟にて
    
         
2010年2月 セカンドプロジェクト 病院にて








     ● 移住


        バーッは、高熱がでやすくて病院とお寺とをいったり
        きたりしていることが多かった。

        癇癪もちで、気に入らないことがあるとすぐあたる。
        でも次の朝には【 おはよう♪今日もマッサージ~!】
        と、手をあわせて甘える。

        先月も姿がみえないと思ったら
       【 先月病院で僕、電気ショックで蘇生したんだよ 】
        …そうだったんだー。

        プロジェクト2に行った次の日、
       【 きのうどこ行ってたの? 】と聞くので、
       【 プロジェクト2の見学に行ったの】 というと、
       【 ぼくも明日向こうにいかなきゃならない。もう移動
        するって。でも行きたくないもん。どうしてもそこ
        に行かなきゃいけないんだったら、バンコクの王宮
        広場で乞食してたほうがまし… 】と、泣きだした。

        何を言っているのかわからないので聞いてみると、他
        の子が嘘を吹き込んだらしい。

       【 向こうに行っても誰も面倒みてくれる人もいないし、
         ここに捨てられたのと同じように、おまえはまた捨
         てられるんだよ。しかも、新しいところに行ったら
         新入りはいじめにあうんだ! 】

        でも、そう言った子もプロジェクト2には行ったこと
        がなくて、本当のことは知らないのに。

        きのう撮ったばかりの写真をみせた。
       【 明るくてこんなにきれい。ちょっとプチリゾートみ
         たいで私だって住みたいよ 】 というと、ちょっ
         とは興味がでたようだ。

        それでも
       【 お寺にいれば寄付にきてお金くれる。向こういった
         ってお金もらえない… どうしたらいいんだ~。】
         そう言ってまた涙…。

          いやいやいや、
        病院でただ寝ている人でも、ひと月150バーツ。
        自分で自分のことができれば、ひと月250バーツ。
        仕事ができる人は、一日6時間労働で60バーツを、
        お給料としてもらえる。

        それを話すと【 ほんとー? 】 と泣き止んだ。
        けれど、今度はどの話を信じたらいいのだろうと混乱
        を隠せない。
        出発間際にも【 もしほんとにいいところじゃなかっ
        ったらバンコクで乞食するからいいんだ 】という。

       出発直前。一緒に行く人もいて落ち着いたようだ。
       この日は6人が移動した。

               出発直前のバーッとパン
        
タイでも路上生活者は多い。(*カオサンにて)

       
       【 日本にもホームレスの人っている? 】というバーッ
       の問いに、【 うん、いるよ 】と答えると、とても意外
       そうに目を見開いていた。