2013年10月21日月曜日

【 滞在記32 】 【2013.08.10 ~ 08.12 】

  





      ● 縁の下の力持ち

        学校の給食を思い出すプレート。
        毎食後、担当の人が洗った食器は、病棟の裏手の、陽が

        よくあたるところで、天日で乾燥している



        看護師が【こうするといいよ】と言ってから、天日干し
        するようになったが、こういった自主的な行為は誰かが
        継続して行わなければ誰もやらない。

        何でもないようでいて、軽症の患者さんの自主的な行為
        に支えられて、うまくまわっていることが多くある。

        彼らは、やってもやらなくても誰に何かを言われること
        はないし強制もされない。だからこそ自分たちの居心地
        のよさが、自分たちにかかっている。




        イサーン出身のゲーンサックは、日々のことを淡々とこ
        なしていくが、何気なくやっていることは重要なことば
        かり。

        ・貯水タンクから、飲料水タンクへの補充
        ・各ベッドサイドにある水さしへの水の補充
        ・掃き掃除 
        ・食器の天日干し
        ・倉庫からの物資補充
        ・その他の力仕事全般 

   
        彼は、入所して6年ほどたっている。
        現在は筋肉もりもりで仕事もできるが、入所当初は重症
        の結核にかかり、体重50kgにまでやせ細ってベッド
        から出ることもできなかっただなんて、誰が信じるられ
        るだろう。




       


        ● オゾン空気清浄機 

        お寺には、様々な寄付が届けられる。
        漢方薬、サプリメント、消毒薬、それぞれにそれぞれが
        考えた【これがいいにちがいない!】の贈り物。

        それがいいものばかりだとしても、パッケージに中国語
        の説明だけだったり、どう扱っていいのかよくわからな
        いものも多くあり、中には消費期限ぎれのものもあり、

        使いこなすためのガイドラインもない。

        大型のオゾン空気清浄機は、病室でのデータ取得に時間
        をかけ、取り扱いに困らないように、研究データ込みの
        ガイドブックも用意されていた。

           結核者病棟に設置されたオゾン空気清浄機





             結核患者の病室にてデータ取得風景


             細菌70%以上、真菌90%以上を
            除去できるとの驚異の数字がでている


        機械は、一番必要と思われる結核患者の大部屋に設置さ
        れたが、看護婦長はほんの5分ほど作動したのち、スイ
        ッチを止めた。
        オゾン特有の匂いが苦手とのこと。
        オゾンを発生するドライヤーや空気清浄機をはじめとす
        る電化製品は、この匂いがあるからこそ作動していると
        いえる。
        適切な濃度を管理さえできれば、殺菌には最適だろう。
        だが、誰か担当がいないとせっかくのいいものも使われ
        ることはない。
        
        説明書を見ながら一緒に確認して設置したのだが、結局
        使ったのは、その1回だけだった。

        残念なことに、こういう事例がとても多い。

        タイの人は、ある分野では新しいもの好きで好奇心旺盛
        だが、ある部分では保守的な面があって、慣れていない
        ものに対しては敬遠する傾向がある。
        
        想像してみよう…タイ人でなくたって説明書が外国語で
        書いてあったら、ちゃんと理解できるだろうか。

        【これは素晴らしいから、ぜひ使ってほしい!】のなら
        現場が効果を認識して使い慣れるまでのサポートとして
        指導するところまで関われたらいいのではないかと思う。

        ハードだけでなく、扱えるように指導するなどコミュニ
        ケーションをベースにした、ソフト部分を充実させるこ
        とができれば、可能なことの幅が広がるかもしれない。

        寄付して完了~!ではない。
        提供される側が利用して恩恵を受けてはじめて、現場と
        提供する側の共通の【よかった!】となるところを目指
        したい。







        ● 虫歯 


        HIVの他に、糖尿病、がん、腎臓病、心臓病、高血圧、
        精神病などなど、他にも様々な病気を併発している方は
        多いが、一番多く悩まされる症状のひとつは、虫歯かも
        しれない。

        体力の低下が虫歯の進行を早めていることに加え、歯磨
        きの週刊が根づいていないことが大きいようだ。
        きれいになると気持ちいいよと、磨いてあげたこともあ
        ったが、面倒くさがって続かない

        虫歯の治療のためには、歯医者に何度も通う必要がある。
        予約が必要な上、体長が不安定で手間も時間もかかるた
        め、一番必要な治療が、とても敷居の高いものとなって
        しまっている。

        虫歯になって痛い時には、痛み止めを飲み続けてしのぎ、
        神経までやられて、根本からぐらぐらになってぼろっと
        抜けおち、穴があいたまま何も処置をすることはない。




        エースは、ひどい歯の痛みで、おかゆをすすることしか
        できなくなり、眠ることもままならない。
        それもそのはず、歯茎に膿がたまり腫れている。
        ただでさえ体力が落ちているところに、栄養が取れず、
        更に力がはいらない。

        大袈裟でなく結果として虫歯が命取りになることもある。


        バンコクでは、他の理由で歯科治療が受けづらいという
        話を聞いた。     
        歯の治療には出血が伴うため、HIV陽性者だとわかると
        治療を断られたという。
        もちろん、免疫に問題があって手術にふみきれない場合
        もある。

        しかし、医療感染を恐れて手術をしてもらえないことも
        あるし、HIVは治らない病気だから、治療したって無駄
        でしょと言われた人もいた。 

        ただ、普通に与えられる機会が、普通に与えられるよう
        になったらいいなと思う。