2014年1月16日木曜日

【 滞在記34 】 【2013.11.10 ~ 11.11 】






       

    ● 乾季の到来

      ゲストハウスから寺への道のりにある、おかずやさんの息子は、こんな
      バリバリ真冬の服装!
      ロッブリーの山の近くは、木も横にたなびいた様相になるくらい
強い風
      が吹いています。










    ● ウィライの変化 

      今年は66歳になるウィライ。入所した頃から、交通事故で右の脳と
      頭蓋骨がない状態だった。本人もどんなことがあったのか理解して
      いないらしく、誰も詳細を知らない。脳のあった部分が水ふうせんの
      ようにふくれあがって熱をもっていた。





      それが、しばらく見ないうちにその水ふうせんのようにふくれていた
      部分がすっかりしぼんでぼっこりと穴があいたようになってしまった。

      目も見えづらくなってきている。
      そして、腕と足のあちこちに、ひどい痒み伴う大きなできものが
      できて、治らなくなった。
      カポシ肉腫のようだと言った人もいましたが、アジアではカポシ肉腫
      が伴う型はそう多くはないと聞くが、医師はそれに対しては答えてく
      れなかった。



     
      それなのに、今までと相変わらず食欲があって冗談もさえている。
      彼女のなかで何が起きているのだろう。





      ● 抗レトロウィルス薬(ARV)治療

      抗レトロウィルス薬(ARV)があれば、患者はHIVととに生きることが
      できる。ARV治療でウィルスは根絶されないが、体のほかの部位への
      ウィルス拡大を阻み、CD4リンパ球数を一定以上まで増加させること
      で、病気の進行を遅くし、患者の臨床状態を改善する。

      しかしARVは非常に強力な薬で強い副作用が現れることがあり、投薬
      をスタートした最初の数週間は気分が悪くなることが一般的だといわ
      れている。その時の症状にあった薬の組み合わせを、医師とこまめに
      やりとりをしながら根気強く探すことが必要になる。

      そんな手間と時間ををかけることは困難であるため、強い副作用が
      あらわれると、それがきっかけで命をおとしてしまう人もいる。
      この状況のなかで生き抜くだけの力があるかどうかにかかっていると
      いえるのだろうか。

      そして、どんなにいい薬があっても、それだけでは決してHIVを克服
      することはできない。医師が根気よく患者と相対することではじめて
      特効薬を最大限に活かし、命につなぐことができる。



        
        
         タムは、ARVをスタートしてはじめての副作用の
         時期を乗り切ったあと、あまりの体調の変化に、
        【生まれ変ったみたいだ!】と、とても喜んでいた
         のだが、その1か月後、またARVの新たな副作用
         でエイズ脳症を発症してしまった。

         

                 元気な頃のタム







      ● HIVではなくても…

      癌末期のエーは、HIVではないのだが、寺にあずけられている。
      脳にダメージがあり、言葉もほとんどしゃべらず、食事も自分では
      食べることができない。





      ヤーオ以外の人が食べさせても、食が進まず、結局はヤーオが毎食の
      食事の介助を手伝っている。
      癌の痛みがはげしく、ひどいときには涙を流して苦しむのだが、発作
      のように訪れる激しい痛みがでると、隣のベッドの患者が預かってい
      る痛みどめをのませる。
      飲むこむ力も衰えてきていて、薬をのむのも一苦労。

      行きどころのないHIV/AIDSの人々のためのホスピスとして世界的に
      有名なパバナプ寺なだけに、HIV/AIDSでない人も受け入れていると
      いうと意外に思われるかもしれない。

      誰でもOKですよ、みなさんいらっしゃーい!というわけではないが、
      何か事情がある人々が受け入れられている例がいくつもある。

      HIV/AIDSのため、国に帰れなくなった外国人。
      他の病気があって社会に居場所のなくなった人。
      そういった事情がある、他の宗教を信仰している人。

      枠がゆるいと、どこにもいることができなくなった人たちの救世主と
      なることもある。

      結局のところ、パバナプ寺は、HIV/AIDSのホスピスではなく、タイ
      の寺なのだ。困った人がいれば、基本的に寺は入所を拒むことはない
      といわれている。(*パバナプ寺は、入所者に、治療に専念しますと
      同意もと、いくつかの禁止事項が設けられている)