● 今年の雨季
昨年は未曾有の洪水に見舞われ、今年の雨季を
心配
される声 が多かったが、 まだあまり降らないのだと
いう。
しかし、降るときはバケツをひっくり返したような
スコールには、 せっかくのレインコート着用も意味
なしの全身ずぶぬれ(>_<、)
いまのところ、昨年のような大き な被害にはなら な
いだろうと予想されてはいるが、 本格的な雨はこれ
からだとか。
● サック
盲目のサックへ、HUUBさんから時計のプレゼント
文字盤に触れることもでき、ボタンを押すと英語で
【 ○○時○○分です 】と声でお知らせする機能が
ついている。
軽症病棟にいるサックは、薬を飲む時間を管理する
のに助かる なあと大喜び!
この1ヶ月後、サックはようやく待ち焦がれていた
目の手術を
受けて、 メガネを使用して、だいぶ見え
るよう になった。
だが、同じ時期に今までサックを支えていた恋人の
デーンの視力が日に日に弱くなっていく。
互いに支え合い、がんばっていた二人。
目も見えて調子もよかったサックにやってきた最後
はあまりにもあっけなかった。
トイレで足をすべらせ て転倒、打ちどころが悪くて
数日後に息を引き取った。
友人が多かったサックの葬儀には多くの仲間がお別
れにやってきた。
デーンが言った。
【 ね、この写真とても気に入っているの。大きく
できるかな?枕元においておきたいの。】
今もずっと心のなかに一緒にいるから寂しくないよ
って。
● 1歳のお誕生日
ゲームが無事1歳のお誕生日を迎えた。
まだ人見知りがひどく、すぐ泣いてしまう。
ママを独り占めで大満足のゲーム。
食欲旺盛で二人分は食べちゃうんです。
すくすく育っています♥
ますますママに似てきました☆
● キレイな人
いつもめいっぱいおしゃれ姿のパンさん
【 病気があるからって手をぬいちゃだめなの。私は
世界で
一番キレイよって 思ってちゃんとおしゃれ
するのよ。 そうすると、元気がでてくるの。 自己
満足なんだけどね、これ は私がいつでも私らしく
いられる魔法みたいなもの。】 といって、ポーズ!
● ハンドメイド てぶくろ
意識障害があると、 酸素吸入のチューブや尿道カテー
テルを 外してしまうことがある。
おむつをとり、あたりかまわず糞だらけにしてしまう
ことも。
傷口をガーゼでおおってあっても、触って悪化させて
しまう 。
そんな状態の患者には、抑制帯をつけることもある。
ちゃんとした抑制帯などはなく、細く裂いたさらし布
で縛ら れることになる。
自分の状態がわかっていないため、不快感から暴れて
余計に
布が食い込んで手足が傷ついて しまう。
以前ロッブリー病院で見たことがあったグローブを参
考に作
ってみることにした。
点滴の
空きボトルに通気のために穴をあけ、編み物の
得意な スタッフに毛糸で編んでもらった。
これで手首が傷つくことなく、てのひらのムレムレも
最小限
にできるといいな。
● 売店
寺の入口から少し歩いたところに小さな小屋がある。
そ こでは、寺でつくった工芸品がおいてある。
手頃なおみやげがあります。
ちょっと見過ごしがちなところにあるので、お越しの際
はどう ぞお立ち寄りくださいね!
PデーンとPサイピンがお出迎え
● 治験
寺で出会った日本人の方に
【 患者さんのために少し
でも力 になりたいので、是非協力してもらえないか 】
というお申 し出があった。
ご自身も、○○病が治ったという健康補助飲料を患者
さんに
寄付したいというのだ。
てのひらにすっぽり入るくらいの小さなボトルには、
鉱泉水と
海水、米酢がブレンドしてあるという。
30mlほどで1本10500円なり。
何往復かのメールのやりとりのあと、その方たちが
寺を訪問
された。
【 こんなにすごいものはない! アフリカでもエイズが
治っ てるんです。 これを飲めば絶対治ります! 】
と熱弁 をふるわれた。
しかし…
患者さんのためのタイ語の資料や通訳を用意するの
は費用が かかるといって用意していない。
患者の様子を知ることもせず、病棟には入ろうとも
しない。
データをとるのは患者のためであって、自分たちの
ためでは ないと言われるのだが、 いいデータがとれ
そうな患者をピッ クアップしてほしいといわれる。
なにか 違和感が募った。
その場に連れてきていたタイ人スタッフとの会話が
聞こえて きた。 その健康補助飲料をタイで販売する
用意が着々と進ん でいるそうだ。
タイや日本だけでなく世界中でその商品を大々的に
扱うため にもエイズ患者のデー タを望んでいるのだ。
エイズ患者のデータをとることができれば水戸黄門
の印籠 を手にするのと同様。
しかもタイでは寺で患者を助けて徳を積んだという
印象も 得られるとふんだらしい。
せっかく日本から来たのだ。
無駄足を踏みたくない。どうして も誰かに試して欲
しいとい うので、今回はまず HIV陰性のスタッフに
試してもらう こと にして、患者さんには次回説明会
をすることにした。
自分で考え、話をすることができる10人の患者さ
んに、 もし機会があったらこの健康補助飲料を試し
てみた いと思いますか?と、聞いてみた 。
(患者さんの意見)
・自分たちはただでさえ何種類もの強い薬をとって
いること で、かなり強い副作用が でることもある。
現状を保つことでさえ大変なのに、素性の知れな
い外国 のものを試す冒険をする 危険はおかしたく
ない。
・もし本当に治る可能性があるのなら、危険がある
としても 試してみたい。
・何かあったとしても、誰も責任とらないんでしょ。
少なくとも自分で選べるだけの判断基準がないの
では、何 ともいえない。
(結果)
商品についてまず情報が欲しい 1人
試したい 1人
試したくない 8人
もし患者を利用しようとしているのであっても、患
者にも同 等のメリットがあれば いいのかもしれない。
少なくとも、患者側にも選ぶ材料があればいい。
私にはわからないことが多いので、 何かあったとき
に相 談にのっていただいている日本の医師に 相談さ
せて いただいた。
すると、これは明らかに【 治験 】である様子 な
ので、次の点に留意するといいというアドバイスを
いただいた。
● 商品の資料、説明をタイ語でわかりやすくする。
● ○○病が治ったというようなあやふやな説明は
できるだ け避ける。
(医学的に証明できていない部分に関して治癒に
ついての 説明は、日本の薬事法 にのっとったよ
うであれば好まし いと思われる。)
● 製品の提供に伴い、とったデータをどのように
使用する のか提示する。
(まずデータとはどこまでを指すのか、名前、
年齢、身長、 体重、血液検査の結果、写真の
提示などは具体的に)
● 望まない時には、いつでも治験を降りることが
できると いう誓約書をかわすこと。
● ご存知だとは思いますが、治験は無料で行われ
ることは ありません。謝礼はどうされるのか前
もって提示される とよいで しょう。
こういう形ならどうだろう。
先方にメールで連絡させていただいたが、返信はなく、
また 次月訪タイされる予定と聞いていたが、もう二度
と会うこと もなかった。
エイズホスピスとして有名なパバナプ寺には、世界各
国から、 見学者がやってくる。中には患者のデータを
とって研究 に反映させるこ ともあるという。
その他、健康関連商品、医薬品の治験やの広告宣 伝の
ためにやってくる人々も少なくない。
マレーシアの大学の調査風景
希望者に採血をし、詳細なデータを提供するという
(こちらの本文とは関係ありません)
※ 後日談…
この日本からの訪問者の方とのやりとりのあと、様々な
ことに疑問がわいて、ざわざわした気持ちになりました。
差別は決して人 に危害を与えたいと思って行われるわけ
ではありませ ん。
普段あえて意識されていないが、何かをきっかけとして
その人がど ういう考 えを持っているか言動によってあき
らかになります。
もともと決して悪意をもっているわけではないのに差別
につながる行為… 差別する側される側を隔てるものは何
だろう?
とても大きな 宿題が残っていて、滞在記もなかなか手に
つ かずに放置が とまらない(/ω\)
気がつけば季節がかわっていました。
いまは答えがなかなかでない問いを持ちつつ、あきらめ
ず問 いか け続けるしかないのかもしれません。